第一回ハッカソン優勝「お笑いって、自分で勉強するの難しいじゃないですか。」

6月13日(土)〜14日(日)の2日間にわたり開催されたハッカソン。
テーマは「AI × Growth」。約15チームが参加し、それぞれが二日間という限られた時間の中で、アイデアを形にすることへ挑みました。
その中で見事優勝を果たしたのが、チーム「鶴岡」の東京大学工学部4年・陽天真さんと、東京大学大学院修士1年・林佑恭さん。同じ研究室で強化学習を研究するお二人が開発したのは、「SuberanAI」。話し方をAIが分析し、より伝わる話し方へと導いてくれるユニークなプロダクトです。
今回は改めてお二人にお時間をいただき、ハッカソンに参加したきっかけから、「SuberanAI」が生まれた背景、開発中のエピソード、そして優勝した今だからこそ感じていることまで、たっぷりとお話を伺いました。
東大生2人が二日間で"SuberanAI"を作り、ハッカソンを優勝するまで
「お笑いって、自分で勉強するの難しいじゃないですか。」
インタビューが始まってしばらくして、そんな一言が飛び出しました。
今回のハッカソンで優勝したチーム「鶴岡」が開発したのは、その名も『SuberanAI』。
自分の話をAIが分析し、「えー」「あのー」「ま」といったフィラーを検知。より伝わる話し方のお手本まで返してくれるサービスです。
「吉本に通うわけにもいかないし、友達に『俺の話どう?』って毎回聞くのも恥ずかしいじゃないですか。」
だからAIを相手に練習する。
その発想が、15チームの中で優勝を勝ち取りました。
でも、話を聞いていくと、この優勝は決して偶然ではありませんでした。

「人が来ないから参加してくれない?」
参加のきっかけは、とてもシンプルでした。
「野球サークルの先輩からLINEが来たんです。『人が来ないから参加してくれない?』って(笑)」
最初は数チームしか集まらないと思っていたそうですが、当日会場に行くと15チーム。
「こんなに集まるんだって驚きました。」
林さんは学生ハッカソンへの参加経験がありましたが、
陽さんは今回が初挑戦。
それでも二人に迷いはありませんでした。
「アートとAIって、あまり結びつくイメージがなかったんです。でも、それが逆に面白そうだなって思いました。」
「勉強を教えるAI」はもうある。じゃあ次は?
テーマは「AI × Growth」。
"成長"と聞いて、多くの人は勉強を思い浮かべるかもしれません。
でも二人は違いました。
「勉強を教えるAIって、もうたくさんありますよね。」
「じゃあ、自分たちが本当に成長したいことって何だろうって考えたんです。」
そこで出てきた答えが、「話す力」。
「世の中には、学ぶ場所はないけど、身につけた方がいいスキルって結構あると思うんです。」
「話し方もそうですし、滑舌とか姿勢とか。学校では教えてくれないけど、大事なことってありますよね。」
そこから話は、意外な方向へ。
「お笑いって、自分で勉強するの難しいじゃないですか。」
「吉本の養成所に通うわけにもいかないし。」
「身近な人に『俺の話、面白い?』って聞き続けるのも、ちょっと恥ずかしい。」
だったら——。
「AIが一番ちょうどいい練習相手なんじゃないか。」
そこから一気にアイデアが形になっていきました。

「優勝できるとは思ってなかった」
アイデアには自身がありましたが、不安もありました。
「他のチームはアートっぽい作品が多くて、見た目がすごく華やかだったんです。」
「自分たちは音声がメインなので、画面だけ見ると地味なんですよ。」
だから最後まで、「優勝できる」とは思えなかったそうです。
結果発表。
3位。
2位。
どちらにも呼ばれない。
「どのチームなんだろうなって思っていたら……」
『優勝、チーム鶴岡。』
「その瞬間に、ようやく実感しました。」

一番苦労したのは、AIじゃなくてPCだった
開発で一番苦労したことを聞くと、返ってきた答えは少し意外でした。
「容量です(笑)」
iPhone向けにアプリを動かすためには、Xcodeというソフトが必要です。
ところが、
「50GB空けても、一回ビルドしたら全部埋まるんですよ。」
「コードを書くより、容量を空ける時間の方が長かったかもしれないです(笑)」
思わず笑ってしまうような、ハッカソンならではのトラブルでした。
AIがあるから、初心者でも"作れる"
今回のハッカソンで一番驚いたことを聞くと、お二人とも同じ答えでした。
「初心者でも、ちゃんとアプリを作れていたことです。」
コードを書いたことがない人でも、AIと相談しながらアプリを完成させる。
そんな光景が会場のあちこちで見られました。
「AIを使えば、発想さえあればここまで作れる時代なんだなって実感しました。」
「でも、エラーを直したり、設計を考えたりするところは、やっぱり人間の知識が必要です。」
だからこそ、フロントエンド、バックエンド、デプロイまで経験してきた自分たちの強みが生きたとも話します。
AIが進化しても、人が考える価値は変わらない。
そんな考えが、お二人の言葉から自然と伝わってきました。
「東大に入ること」がゴールじゃなかった
インタビューでは、開発の話だけでなく、お二人自身のことも聞きました。
林さんは、「どうせ目指すなら一番を」と思い東京大学を目指したそうです。
しかし、入学後に全国トップレベルの学生たちと出会い、価値観が変わりました。
「どれだけ頑張っても、この人たちには勝てないって初めて思ったんです。」
そこで、「一番になること」ではなく、「自分が本当に面白いと思えること」を探し始めました。
それが強化学習の研究でした。
一方の陽さんは推薦入学。
本来進みたかった研究室の教授が退官することになり、一度進路を白紙に戻したといいます。
「そこで、本当にやりたいことを探し直しました。」
その結果、電子情報工学へ。
今ではアプリ開発のインターンにも取り組みながら、AIプロダクト開発に夢中になっています。

「もっと気軽に来てほしい」
最後に、これから参加する人へのメッセージを聞きました。
「思っているより全然ハードルは低いです。」
「会場もピリピリした雰囲気じゃなくて、本当に参加しやすかった。」
林さんも続けます。
「一人で勉強しているだけでは出会えない技術に触れられるんです。」
「だから、高校生とか、本当に初心者の人にも来てほしいですね。」

インタビューの最後、お二人は「次回もタイミングが合えばぜひ参加したい」と話してくれました。
「SuberanAI」が生まれた二日間。
その裏側には、"優勝"だけでは語れない、「面白いと思ったことを、とことん形にする」二人の姿勢がありました。
そして、その姿勢こそが、今回の優勝を引き寄せた一番の理由だったのかもしれません。
